相続により取得した建物の減価償却方法

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事業を営んでいた親が亡くなり、その親の事業を子供が引き継いだと
します。事業で使用していた減価償却資産は子供が相続しますが、
その場合の減価償却費の計算方法についてです。

減価償却費を計算するに当たりの必要な3要素

・取得価額
・償却方法
・耐用年数 
の3つが減価償却費を計算する上で必要となります。
軽く説明します。

取得価額とは、建物などの減価償却資産の購入額のことです。
ただし、購入額のほかに取得価額に含めないといけないものも
あります。引取運賃、購入手数料、未経過固定資産税の支払いが
あればその支払い額などなど。
ちなみに、不動産取得税、登録免許税、登記費用などは取得価額に
含めずに一括費用計上(租税公課)でOKです。

償却方法には旧定額法と定額法、旧定率法と定率法などがあります。
その他にも生産高比例法等などがありますが使う機会は少ないかと。
定額法は計算の結果、減価償却費は基本的には毎年同じ額になります。
定率法は残存価額(簿価)に対して定率法の償却率を乗じて
減価償却費を計算しますので、償却する額(費用計上できる額)は
初年度がもっとも多く、その後は経年とともに減少していきます。
旧定額法・定額法、旧定率法・定率法ですが、平成19年度に行われた
税制改正により平成19年3月31日以前に取得したものは旧定額法か
旧定率法、平成19年4月1日以後に取得したものは定額法か定率法で
減価償却費を計算することとなります。
個人事業主の建物ですと、平成10年4月1日から平成19年3月31日までに
取得したものは旧定額法か旧定率法(選択できる、選択するには
税務署に届出が必要、選択しなかった場合は旧定額法になる)、
平成19年4月1日以後に取得したものは定額法(この方法のみ、
選択できない)で減価償却費を計算します。

減価償却資産には、建物・車両運搬具・器具備品などの種類、
その用途ごとに耐用年数が定められています。
例えば、減価償却資産の取得価額が100万円、耐用年数が10年だと
すると、その100万円を10年間で経費計上するということです。
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」というのもが
あるので、それをみて取得した減価償却資産の耐用年数を
あてはめます。じぶんで自由に決められるものではありません。

相続により取得した建物の減価償却方法〜具体例を交えながら

結論を言ってしまいますが、上述の減価償却費を計算する上での
3要素のうち、取得価額(取得時期も)と耐用年数は被相続人から
引き継ぎますが、償却方法は引き継ぎません。
相続した日に相続を取得原因として新たに取得したものとして
償却方法を選びます。贈与による取得も同様です。
ただし限定承認で相続した場合には取り扱いが変わります。


具体例〜

平成18年より父が不動産業を営んでおり、同年1月に賃貸用の建物を
取得して不動産事業の用に供したとします。
賃貸用建物の取得価額は50,000,000円、
減価償却方法は旧定額法で行っていた、
構造は鉄骨鉄筋コンクリート造で耐用年数は47年(旧定額法償却率0.022)。
その父が令和2年6月10日に亡くなって、その子供が父の不動産事業を
相続(限定承認以外)したとします。

父の不動産事業に係る減価償却費の計算
・平成18年〜令和1年分の減価償却費 
 50,000,000円×0.9×0.022×14年=13,860,000円
・令和2年の減価償却費(準確定申告での減価償却費)
 50,000,000円×0.9×0.022×6月/12月=495,000円

相続開始時の賃貸建物の未償却残高
50,000,000円ー13,860,000円ー495,000円=35,645,000円

子供が父の不動産事業を引き継ぎますが、
賃貸用建物の取得時期(平成18年1月)・取得価額(50,000,000円)・
未償却残高(35,645,000円)と耐用年数(47年)は引き継ぎますが、
償却方法の旧定額法は引き継ぎません。
相続時に新たに取得したものと考えて償却方法は選びます。
相続が令和2年6月10日なので、その年月日に新たに賃貸用建物の
取得だと償却方法は定額法しか選べません。
なので、相続人の子供は旧定額法ではなく定額法で
減価償却費を計算することになります。
旧定額法と定額法の大きな違いは0.9をかけるかけないか、
です。

令和2年、相続した子供の賃貸用建物の減価償却費の計算
50,000,000円×0.022×7月/12月=641,666円

ちなみに、令和3年分の減価償却費の計算は、
50,000,000円×0.022=1,100,000円 となります。

相続により減価償却資産を取得した場合の減価償却費の計算、
上述の例だと旧定額法で計算してしまう間違いは結構多い
印象なので注意をしていただければ、と思います。


国税庁HPの質疑応答にも載ってますのでリンクを貼っときます

質疑応答事例 平成19年4月1日以後に相続により減価償却資産を取得した場合

おわりに

上述の相続等により減価償却資産を取得した場合の
減価償却方法は、所得税法でダイレクトにそう書かれている
わけではなく、裁判でそのような判決が下されたからです。
裁判での判例は法律に準ずるものとして取り扱われます。

お問い合わせはこちらのフォームよりご連絡ください。

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