自宅を売った場合、確定申告は必要?不要?

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個人が自宅(土地、建物など)を売った場合、
所得税での10の所得区分のうち分離課税の「譲渡所得」に該当します。

総合課税の所得(会社員の給与所得、個人事業主の事業所得など)は、
それらの所得を合算して税金計算しますが、分離課税では別(単独)で
税金計算します。

利益が出ていれば必要、出ていなければ不要

個人が自宅である土地・建物を売った場合、
利益が出ていれば基本確定申告は必要、利益が出ていなければ
確定申告は不要、となります。
譲渡所得の所得税を計算した結果、税額0円であれば申告しなくていい
は間違いです。利益が出ていて、例えば居住用の3,000万円控除の適用を
受け税額0円になった、特例の適用を受けて税額0円になった場合には
確定申告は必要になります。

ここでの「利益」とは

売った金額 ー 取得費 ー 譲渡経費

上の算式で計算した結果、プラスであれば利益が出ている、
0又はマイナスであれば利益が出ていない、ということです。
注意してほしいのは、取得費になります。

取得費は買ったときの土地建物の金額(他にも買ったときの
仲介手数料、登録免許税、不動産取得税等も取得費の計算に
含められる)ですが、単純に買ったときの金額がそのまま
取得費になるわけではありません。
自宅(戸建て、マンション)を買った場合は、土地と建物を
買ったということになります。
自宅を売った場合の譲渡所得の取得費を計算する場合、
まずは買ったときの金額を土地・建物部分に分けます。
土地部分はそのまま取得費になりますが、建物部分は
住んでいた期間の減価償却費を計算して
それを建物の取得費からマイナスしなければいけません。
取得費(経費)が減る、ということです。

ですので、単純に買ったときの金額より売ったときの金額の方が
低かったから利益は出ていない、確定申告する必要はない、
ということではありません。建物の減価償却費部分を取得費から
マイナスした後、さらに譲渡経費(売ったときの仲介手数料など)を
マイナスして利益が出ているかいないかを見ます。

売ったときの金額が3,000万円、買ったときの金額が3,500万円、
500万円のマイナスだから確定申告いらないよね、ということでは
ありません。

取得費の計算する上で、買った金額は覚えているんだけど
買ったときの契約書がない、というケースもあると思います。
買ったときの契約書がないと概算取得費(売った金額の5%)を
使わないといけないときもあります。
そうなると実際には利益が出ていなくも譲渡所得の計算上
利益が出て多額の納税が発生することもあるでしょう。
まずは買ったときの書類(契約書、領収書等)が手元に
あるかの確認をしましょう。
買ったときの契約書がない場合、地域によっては「市街地価格指数」
というもので取得費を計算することもできます。
この計算を一般の方がおこなうのは無理だと思います。
買ったときの契約書がないけど、概算取得費を使いたくなく
という場合は税理士に相談してみてください。
ただし、税理士は税金の専門家ではありますが、税金のことに
詳しくない税理士もけっこう存在しますので注意してください。

具体例①会社員が自宅を売った場合

前提

・会社員で会社の給料については年末調整が済んでいる
・令和2年年収700万円、所得控除合計200万円、源泉徴収税額22.9万円
・令和2年に自宅を3,200万円で売った
・売った自宅は平成10年3月に4,000万円で買った
・4,000万円の内訳は、土地2,500万円、建物1,500万円
・建物は戸建てで木造(非業務用の償却率0.031)
・売った自宅の仲介手数料として90万円支払った

自宅を売った、譲渡所得計算上の利益が出ているかを
計算してみましょう。
単純に売った金額(3,200万円)から買った金額(4,000万円)と
譲渡経費(90万円)を引くと890万円のマイナスです。


売った金額
〜32,000,000円


取得費
土地の取得費〜25,000,000円

建物の取得費〜15,000,000円から住んでいた期間の減価償却費をマイナスする
15,000,000円ー9,625,500円=5,374,500円
(減価償却費の計算 15,000,000円×0.9×0.031×23年=9,625,500円)

土地建物の取得費
25,000,000円+5,374,500円=30,374,500円


譲渡経費
〜900,000円


売った金額   ー 取 得 費   ー 譲渡経費 
32,000,000円 ー 30,374,500円 ー 900,000円 = 725,500円

となります。
このケースだと利益が出てしまうので譲渡所得の
確定申告が必要、ということになります。
見た目のマイナス(△890万円)に騙されてはいけません。
なお、所得控除ですが会社員の方なので総合課税(給与所得)からの
控除で全額使ってしまうので分離譲渡所得から控除できる分は0円と
なります。

具体例②収入0円の方が自宅を売った場合(利益が出ても申告不要のケース)

前提
・令和2年は無職で収入0円
・医療費控除分として26万円分ある
・令和2年に自宅を売却した
・売却金額、購入金額と年、譲渡経費等は具体例①と同様とする

この場合ですと、分離課税譲渡所得が725,500円出ますが、
所得控除として740,000円分(医療費控除260,000円、基礎控除480,000円)
あるので、725,500円ー740,000≦0、となり確定申告不要(3,000万円控除
などの特例を使わずに税額0円となったから)、となります。

所得控除ですが、今回のケースですと収入が0円で総合課税から差し引く分は
0円なので余った分(医療費控除と基礎控除分74万円)は分離課税の所得から
差し引くことができます。収入が公的年金のみの方が自宅を売った場合も
所得控除があまる可能性があるので、実際あまったら分離課税所得から
その分は控除できます。

ただし、計算の根拠となった書類(売買契約書、医療費領収書等)などは
保管しておく必要があります。税務署から問い合わせがくることも
考えられるので説明できる状態にしておかなければいけません。
この場合で申告しなかった、税務署から問い合わせがきた、
書類は捨ててしまっていて客観的に説明できない、となってしまうと
譲渡所得で概算取得費(売った金額の5%)の適用となってしまい
多額の税金(罰金も含めて)を追徴される結果になりかねませんので
書類と計算結果は必ず保管しときましょう。

おわりに

自宅を売った場合で利益が出ているかいないかの判断は
建物部分の減価償却計算も絡むのでなかなか難しいです。
長く住んでいた住宅ほど減価償却費でマイナス金額は
大きくなるので、結構損が出ていそうなので大丈夫かな
と思っていても実際計算してみると利益が出ていて申告が
必要だった、ということも大いにあり得ます。

令和2年に自宅を売ったんだけど確定申告どうしよう・・・
と思っている方がいらっしゃればご連絡いただければ。
お力になれますので。令和2年分確定申告の申告納期限は
令和3年4月15日まで延長されたので、まだ時間はあります。

お問い合わせはこちらのフォームよりご連絡ください。

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