当期の仕入は全て当期の経費になるわけではない

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当期に仕入れた商品、当期に全て売れれば
当期の仕入金額全額が当期の経費になります。

でも、当期に仕入れた商品で当期に売れ残って
しまった分は当期の経費にはなりません。

仕入は売上原価

会社の経費は大きく3種類に分けられます。

・売上原価
・販売費及び一般管理費
・損失

販売費及び一般管理費は、従業員のお給料、事務所家賃、広告宣伝費、
水道光熱費、消耗品費などです。

損失は、貸倒損失、固定資産売却損・除却損などです。

小売業など、お客に売るための商品の仕入、これは経費のうち
売上原価に分類されます。
仕入ですが、当期に仕入れた商品全部が当期の売上原価となる
わけではありません。
当期に仕入れた商品のうち、当期に売れた商品分が
当期の売上原価となります。
当期に売れ残った分は、売れた期の売上原価となります。
そして、当期の決算では売れ残った分を棚卸資産として
売上原価から抜く必要があります。

売上原価の計算の具体例

小売業を営む会社で、当期は令和2年1月1日から12月31日とします。
前期に売れ残った商品が10個あったとします。
仕入金額は前期売れ残り分、当期仕入分全て1個70円、
売上金額は前期売れ残り分、当期仕入分全て1個100円、とします。

当期の仕入の状況等は、
(前期売れ残り商品10個)  〜当期に全て売れた 
 ・3月  商品20個を仕入 〜   〃
 ・5月  商品30個を仕入 〜   〃
 ・9月  商品10個を仕入 〜   〃
 ・12月  商品15個を仕入 〜当期に7個は売れたが8個は売れ残った    
だったとします。

まずは、売上の計算。
前期の売れ残り分10個と当期に仕入れた75個のうち67個、
合計77個が当期に売れた。
当期の売上金額は、売上単価100円×77個=7,700円、となります。

次に、売上原価の計算。
前期の売れ残り分10個と当期に仕入れた75個のうち67個、
合計77個が売れた。
その77個の仕入が当期の売上原価となり経費になります。
当期の売上原価は、仕入単価70円×77個=5,390円、となります。

当期に仕入れたけど売れ残った8個については、
当期の売上原価(経費)とはなりません。
実際にその商品が売れた期の売上原価(経費)となります。
翌期に売れたら翌期の売上原価となり、
翌々期に売れたら翌々期の売上原価となります。

そして、当期に仕入れたけど、当期に売れなかった商品は
棚卸資産として資産計上(売上原価から抜く処理)をして
決算を組みます。

繰り返しになりますが、売上原価として経費になるものは、
売れた分のみ、となります。
当期分であれば、当期の売上に直接(個別)に対応する分が
当期の売上原価となります。

当期に仕入れた分は当期に全て売れていれば
全て当期の売上原価(経費)になりますが、
当期に売れ残った分があれば、その売れ残り分は
当期の売上原価(経費)にはなりません。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法はいくつか種類があり、
仕入金額がそのまま棚卸資産として計上する金額に
ならない場合もあります。
評価方法としては、最終仕入原価法、先入先出法、総平均法、
個別法などがあります。

棚卸資産の評価方法は会社で選択できます(選択する場合は
届出書を提出期限までに税務署に提出する)。
選択しなかった場合は、簡単な最終仕入原価法で評価します。
最終仕入原価法とは、期末に最も近い時期に仕入れた金額で
棚卸資産を評価する方法です。

例えば、期末が12月31日の会社が、同じ商品を
10月に100円で5個仕入れた、
12月に90円で5個仕入れた、その10個は全て売れ残ったとします。
期末棚卸資産の金額は、
100円×5個+90円×5個=950円、ではなく
90円×10個=900円、となります。
最終仕入原価法では、同じ商品が期末在庫となった場合は、
期末に最も近い時期の仕入をその商品の評価金額とする
方法です。

全ての業種に仕入(売上原価)が発生するわけではない

小売業・卸売業などは、仕入があるので売上原価は発生しますが、
売上原価が発生しない業種も当然あります。

売上原価が発生しない業種の代表としては、
不動産賃貸業、サービス業などがあります。
ただ、サービス業については場合によっては、
売上原価が発生するときもあります。

おわりに

上述の仕入、売上原価については会社(法人)を前提と
しましたが、個人事業主でも同じとなります。

売上原価が発生する業種では、売上原価が適正か(当期に
売れ残った分は棚卸資産として売上原価からマイナスして
いるか)は税務調査時には必ずチェックされます。

お問い合わせはこちらのフォームよりご連絡ください。

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