個人事業主として開業した場合、自家用車を事業用に転用した場合の減価償却費の計算方法

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個人事業主・フリーランスとして開業する場合、
自家用車として使っていた車を事業で使うこととなったとき、
その自家用車の使用分を経費として計上したいと思います。

事業で使ったガソリン代、駐車場代はもちろん経費になります。
では自家用車自体は経費になるのでしょうか?

前提として自家用車を開業と同時に事業でのみ使う(転用する)、
車は普通乗用車、とします。

経費にできる?できない?

事業で使うものであればもちろん経費にできます。

ただ、車は一括で経費計上ではなく減価償却資産なので
減価償却費を計算して経費計上することになります。

その計算方法ですが今回の場合はちょっと面倒くさいです。

具体的には、
・業務の用に供した日の未償却残高を計算する
・業務の用に供した後の減価償却費を計算する(経費となる部分)
の手順です。

「業務の用に供した日の未償却残高」は、

車の取得価額 ー プライベートで使った期間の減価の額

で計算します。
「プライベートで使った期間の減価の額」は、
計算方法は旧定額法、その資産の法定耐用年数を1.5倍した
耐用年数を使い計算します。

「事業の用に供した後の減価償却費の計算」は、
計算した未償却残高を使いおこないます。

わかりずらいと思うので、実際の具体例で見ていきましょう。

新車の場合

前提として、
・個人事業主として開業したのが、令和2年10月1日
・平成29年8月に新車を2,500,000円で購入、完全なプライベート用だった
・開業と同時にその車を完全事業用に転用した(事業でのみ使う)
・減価償却の方法は定額法
とします。新車(軽自動車以外)の法定耐用年数は6年(償却率0.167)
です。

未償却残高を計算する

まずは、プライベート期間の減価の額を計算します。
その計算は、旧定額法でおこないます。
「取得価額×0.9×法定耐用年数を1.5倍した年数×プライベート期間の年数」

2,500,000円 × 0.9(※1) × 0.112(※2) × 3年(※3) = 756,000円

(※1)〜旧定額法は必ず取得価額に0.9を乗ずる。ルール。
(※2)〜新車の法定耐用年数6年×1.5=9年。9年の償却率は0.112。
(※3)〜平成29年は8月取得なので5ヶ月(切捨)
    平成30年、令和1年は各1年
    令和2年は9ヶ月で1年(切上)、の合計3年
    プライベート期間に係る年数で1年未満の端数は
    6月以上は1年、6月未満は切捨。ルール。

上記の算式で計算した756,000円がプライベート期間の減価の額で
これを取得価額からマイナスします。

2,500,000円 ー 756,000円 = 1,744,000円
が「事業の用に供した日の未償却残高」となり、
この金額を使い、事業の用に供した後の減価償却費(経費にできる)を
計算します。

事業の用に供した後の減価償却費を計算する

あとは、上記で計算した未償却残高を使い普通に減価償却費を計算します。
令和2年分の減価償却費は、

1,744,000円 × 0.167 × 3月/12月 = 72,812円

72,812円が令和2年に経費とすることができる減価償却費となります。


ちなみに、令和3年分の減価償却費は、

1,744,000円 × 0.167 × 12月/12月 = 291,248円

となります。


注意点としては転用後の減価償却費の計算で使う耐用年数は、
法定耐用年数の6年(償却率0.167)を使うということです。
転用時点では中古になっているから中古の耐用年数を使う
ということではありません。

中古車の場合

前提として、
・個人事業主として開業したのが、令和2年10月1日
・平成29年8月に中古車を1,500,000円で購入、完全なプライベート用だった
・開業と同時にその車を完全事業用に転用した(事業でのみ使う)
・減価償却の方法は定額法
とします。その中古車(軽自動車以外)購入時に耐用年数は4年
(償却率0.250)と見積もった。新車の法定耐用年数は6年。
 

未償却残高を計算する

プライベート期間の減価の額の計算は新車の場合と同じです。

1,500,000円 × 0.9(※1) × 0.112(※2) × 3年(※3) = 453,600円

(※1)〜旧定額法は必ず取得価額に0.9を乗ずる。ルール。
(※2)〜新車法定耐用年数6年×1.5=9年。9年の償却率は0.112。
(※3)〜平成29年は8月取得なので5ヶ月(切捨)
    平成30年、令和1年は各1年
    令和2年は9ヶ月で1年(切上)、の合計3年
    プライベート期間に係る年数で1年未満の端数は
    6月以上は1年、6月未満は切捨。ルール。

上記の算式で計算した453,600円がプライベート期間の減価の額で
これを取得価額からマイナスします。

1,500,000円 ー 453,600円 = 1,046,400円
が「事業の用に供した日の未償却残高」となり、
この金額を使い、事業の用に供した後の減価償却費(経費にできる)を
計算します。

事業の用に供した後の減価償却費を計算する

あとは、上記で計算した未償却残高を使い普通に減価償却費を計算します。
令和2年分の減価償却費は、

1,046,400円 × 0.250 × 3月/12月 = 65,400円

65,400円が令和2年に経費とすることができる減価償却費となります。


ちなみに、令和3年分の減価償却費は、

1,046,400円 × 0.250 × 12月/12月 = 261,600円

となります。


新車の場合と中古車の場合とで変わるのは、転用後の減価償却費の
計算で使う耐用年数です。
新車(軽自動車以外)の場合だと法定耐用年数は6年を使い転用後の
減価償却費を計算します。
中古車の場合だと購入時に何年使えるかその耐用年数を見積もる、
見積もれないときは簡便法で耐用年数は決定します。
今回の場合だと購入時に見積もった耐用年数は4年なので
その4年を使い転用後の減価償却費を計算します。

転用時に法定耐用年数を過ぎていても経費計上できるケース

乗用車新車の法定耐用年数は6年、軽自動車の法定耐用年数は4年です。
転用時にこの法定耐用年数を過ぎていても減価償却費を計上できる
ケースもあります。

上述のとおり、プライベート期間の減価の額は法定耐用年数を1.5倍して
計算するので乗用車新車で9年、軽自動車で6年経過していなければ
減価償却費を経費に計上できます。

車だけではなく他の固定資産も同じ

今回は、車を例にしましたが、家屋・パソコンなど他の固定資産を
プライベートから事業用に転用するときも同じ考え方となり
その減価償却費は経費に計上できます。

おわりに

今回は、開業した場合を例としましたが、
開業後に自家用車を事業用に転用した場合も同じ取扱いです。

車に限らず、開業時にプライベートの固定資産を事業用に
転用していることは結構多いと思いますが、その経費計上が
漏れてることがあるのかな、と思いこういう設定にしてみました。

お問い合わせはこちらのフォームよりご連絡ください。

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